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【Onlooker】~サラが見たもの~
第4章 安堵させる、左手?

 そんな些細なことに拘っているのは、起き抜けで頭がぼうっとしてるせいだけではない。サングラスのない黒木の顔――その眼差しは、とても繊細で優しそうに見えたから。

 その黒木が、言う。


「アイツらを問い詰めた処、お前が飲まされたのは普通の睡眠薬らしい。だが、それでも今は安静にしといた方がいいぞ。家に着くまで、寝てろ」

「うん……そうする」


 サラは言葉に甘えようとして、しかし目を閉じる前にもう一度、黒木の方を見た。ガラスを突き破った左腕には、タオルが巻きつけられ、それが赤く染まっている。頬にはナイフが一閃した時の、切り傷も――。


「……」


 それを見た時に、サラは薄らぐ意識の中に、口にすべき幾つかの言葉を思い浮かべていた。それは――


 大丈夫ですか? ――とか。ありがとうございます――とか。ごめんなさい――だったり。


 でもきっと――


『別に――俺は自分の仕事をしただけだ』


 黒木はそう言うのだろう。

 それは彼らしいとは思うけど、でもそれだと、今までと同じことなのだと感じた。

 サラにはそれだと、少し物足りなくて。


 じゃあ、どうしよっか……?


 サラはそう考えながら、そして――。


 あ、そうだ……次からは……そう、しよ…………。


 なにかを思いつくと、そのまま眠りについた。

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