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【Onlooker】~サラが見たもの~
第4章 安堵させる、左手?
※ ※
同じ夜、【Onlooker】事務所の社長室で――。
「それで、サラちゃんの様子は大丈夫? ええ――ええ――そうね、一応は明日になってから、改めて私の方で。ううん、それはいいわ――それより、貴方の方こそ大丈夫なの?」
照明の消えた室内。外からのネオンの光が、薄らと電話をする紅谷零子の姿を浮かび上がらせていた。
「その気持ちはわかるけれど――結果として、黒木くんは身体を張ってサラちゃんを守ってくれたじゃない。いいわ、その話は改めて――今回の責任は、私にだって――。ええ、そうね。そのことも、わかってるわ」
零子はいつになく、険しい顔となった。
「じゃあ、黒木くんもちゃんと病院に行くのよ。ええ――お疲れ様」
そこで通話を終わらせた零子は、ふっと一息。それから、スマホの青白い光を顔に受けながら、続けて違う番号を発信した。
「あら、どうも――そんな形だけの挨拶はいいの。私の言いたいこと――わかってるんでしょう?」
零子は口調こそ軽やかだが、明らかにさっきまでの電話とは違うピリリとした緊張感を醸し出したようだ。
「へえ、そう――一応、承知はしてるようね。でも当然でしょう――だって、貴女に紹介された、お客のことだもの。それよりも、私が気になっていることは、それが貴女の思惑通りなのか、どうかってこと?」
そう言って、相手の言い分を聴いた零子は――
「まあ、随分と図太くなったようね――咲花」
と、その名を口にした。
「そっちのことは、そっちで処理しなさい。それと、次があったら、貴女にもきっちり落とし前をつけさせてもらうから。そう――それだけは、覚悟して」
最後に念を押すようにそう告げて、零子はその通話を終わらせていた。