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【Onlooker】~サラが見たもの~
第4章 安堵させる、左手?
※ ※
数日後、アパートの前に迎えに来たベンツ。
その到着を道に出て待っていたサラは、元気な様子でそれに乗り込んでゆくが――。
「お待たせー」
「は? 今、来たばかりだし。つーか、寧ろ待ってたのお前だろうが。それより、なんで?」
「いいじゃん。そもそもベンツの後部座席なんて、柄じゃないもん」
バタン――とドアを閉めてサラが乗り込んだのは、黒木と肩を並べる助手席だ。
やや文句を言いたそうに、サラの顔を眺める黒木。その顔を見返して――。
「んん、そのサングラス――新しいの?」
「いや、古いヤツ。お気に入りは、この前、お釈迦にしちまったからな。イマイチしっくりこねーが、仕方ねーよ」
「なんだ、わかってるじゃない」
「は? オ、オイ……」
サラにサングラスを奪われ、素顔の黒木が慌てる。
「そもそも、サングラスが似合ってないの。だけど、そのタトゥーは割と好きかも」
黒木はタトゥーのある左手で髪を掻くと、照れ隠しのように言った。
「はあ……? なんか、今日のお前って、ウザくね?」
「ああ、ひどーい! せっかく私が――」
思わず強まる語気を静めようと、サラは言葉を呑み込んだ。
「どうかしたのか、急に?」
「ううん、別に。それより、名前を教えてよ」
「はあ? 知っんだろ」
「フルネーム――下の名前、聞いてない」
「……俊太だよ」
仕方なく、黒木がそう告げると――
「ふーん……黒木俊太か」
サラは噛みしめるように、そう繰り返した。