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【Onlooker】~サラが見たもの~
第5章 アイドルの、掟(ルール)?
『僕は――射精ができなくなってしまった』
それは先ごろ、あの白隅サラを前にして口にした告白だった。しかし、それは必ずしも正しいものとは言えない。
己の全てを晒したいと思わせる、白隅サラの眼差し。それを前にしても、まだ明かせないことはあるのだ。
涼は確かに、セックスに於いて射精に至ることは、ない。そして恐らく自慰行為でもそれが叶わないことは、感覚としてわかっていた。
だから、たった一つ。射精に至ることが可能なケース――それは、夢精。
夢精とは主に、未だ自己処理を覚える前の思春期の少年によくある、生理現象であり。身体に蓄積された精液が、文字通り夢の中で放出されるのであるが――。
涼にとって、それが訪れる間隔は定かではなかった。おぼろげに、数カ月に一度。身体が留めておけなくなった精液が、やはり夢をトリガーとして体外に放出されるのだ。
そして、その時に見る夢は、いつも同じ。それは今は亡き妹、紺野潤(じゅん)の夢である――。
『潤が――一番望むことは、なに?』
在りし日の妹に、涼はそれを訊ねて。それに対する彼女の想いは、こんな言葉で彩られていた。
『たった、一度きり……恋を、してみたかった』