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【Onlooker】~サラが見たもの~
第5章 アイドルの、掟(ルール)?
その映画の役柄では猟奇的な殺人鬼ということもあり、とにかく暗い眼差しの殺伐な男といったイメージに終始していた。
今、目の前に立つ栗山真司は一見して爽やかそうな好青年であると感じていたものだから、とても同一人物とは思わなかった。だからこそ紺野が言った通り、役者としては優秀であるということになるのだろう。
それにしても――
「……」
長峰ひかるの方は相変わらず横を向いたまま、ぴりぴりとした空気をその周囲に放っている。
紺野から紹介はされていないが、国民的アイドルグループのNSJ44にあってはグループ立ち上げからのメンバーであり、年齢は確か自分より三つくらい上であったとサラは記憶している。タレントとしてバラエティー番組等でも活躍しているから、全国的にも全年齢的にも知名度は抜群であろう。
しかし、昨今ではグループの人気に陰りが出始めたことで頻りに世代交代が叫ばれるようになり、その煽りを受けた形で初期メンバーの多くがグループからの卒業を余儀なくされている、というそんな事情もあるようで。
だが、それらは表層から世間で囁かれていることに過ぎず、実際にグループ内で長峰ひかるがどのような立場であるのかを、当然ながらサラが知る由もなかった。
そして少なくとも今の彼女が不機嫌であるのは、それらの事情とは関係なさそうである。