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【Onlooker】~サラが見たもの~
第5章 アイドルの、掟(ルール)?
「紺野さん――」
ここで初めて口を開いたのは、栗山真司だ。長峰ひかるを庇うようにして矢面に立つと、紺野に訴えかけてゆく。
「今日こうして二人でここに来たのは、条件次第で貴方が僕たちのことを黙っていてくれると仰ったからです。ですが、紺野さんが提示した条件については、はっきり言って常軌を逸してるとしか思えない。僕たちが愛し合っているところを、見せろだなんて……」
「僕にじゃないさ。彼女にだよ」
紺野はそう言って、サラの方に掌を向けた。
すると栗山はサラを一瞥してから、眉間に皺を寄せて再び紺野を睨み付けた。
「わけがわかりませんね。一体そうすることに、どんな意味があるというんですか?」
「それは、君たち次第だ」
そう言って傍らに立つと、紺野はとても自然な動作でサラの肩に手を置く。
「彼女は人の情事を見つめることによって、当人たちさえ知り得ない――心の奥底を見通すことができる。いわば、新手のカウンセラーといったところ」
「あ、あのぉ……紺野さん?」
私、そんな大袈裟なことは、できませんけど……。
サラは些か面食らってそんな意図を込めた視線を向けるが、紺野はそれに構うことなく話を続けた。
「その彼女の瞳を前に、君たちはどんな自分を見つめて欲しい?」
その時――
「……?」
思い詰めた顔でサラを見返したのは、意外にも長峰ひかるだった。
それに対し、今度は栗山の方はその苛立ちを隠さない。
「まるで話しが見えませんよ。大体、その娘――他人のセックスを見ることがカウンセリングだって? そんな話、信じられませんよ。もし、僕たちをからかって面白がっているのなら、これで帰らせてもらいます」
「そう? じゃあ、僕も君たちのことを、黙ってはいられないな」
「脅し、ですか……?」
「別にマスコミにリークしようなんて一言も言ってないよ。しかし少なくとも舞台を取り仕切る立場上、君たちの事務所に黙っているのは心苦しい、ということさ。僕は気がついてしまって、君たちも暗にそれを認めてしまっているのだから」
「そ、それは……」
「付き合い続けるというのなら、いつまでも隠しきれはしないだろう。それこそ週刊誌にすっぱ抜かれたらどうするつもり? その時に多大なダメージを受けるのは、栗山くんではなく長峰くんの方なんだよ」