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【Onlooker】~サラが見たもの~
第5章 アイドルの、掟(ルール)?
「くっ……」
栗山は悔しそうに、ぐっと拳を握りしめた。
ここまでの話を聞いた限り、サラにしてみたら自分がこの部屋に居ることに、とても複雑な心境にならざるを得ない。紺野に求められた自分の役割はわかったが、明らかに当事者となる二人はそれに納得していないようだ。
だが、それはそうなのだろう。オンルッカーの特殊性についてはサラだって十分にわかっているつもりだ。自分で望まない限り、それに関わることなど本来ならあり得ないはず。
そう考えてしまうから、今のサラは所在がない。それどころか二人に存在自体を疎まれているようにすら感じている。
だからこそ不可解なのは、紺野涼の態度だった。二人の弱みをつき、無理強いをして困らせているように見える。それはサラの知る優しいイケメンさんのイメージにはとは、ほど遠いもの。
最も彼の人となりをどれだけ知っているのかと問われれば、その返答にサラは窮することになろうが……。
「……」
それでも、サラは聞いてしまっていた。紺野と今は亡き、妹の物語。それ故に彼の有した、その苦しみについても。秘めていた想いを自分に語ってくれた紺野を信じるからこそ、今の状況にも特別な理由はあるはずだとサラは考え直すのだった。
すると――
「どの道、紺野さんの言う通りにはできませんよ。今日ここに伺った本当の理由は、僕たちの意思をお伝えするためですから」
栗山は険しい顔つきのまま、紺野に言った。
「それはまた、どういうことかな?」
「彼女の立場を鑑みれば、結論は一つしかないということです」
「つまり?」
「僕たちは、もう――別れることを決めました」
栗山は淡々と、そのように告げた。