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【Onlooker】~サラが見たもの~
第5章 アイドルの、掟(ルール)?
「どうして、そう思ったの?」
厳しい反応を示した栗山の機先を制するようにして、紺野がそうサラに訊ねた。
「はい……先ほどから皆さんが一番に気にかけているのは、長峰さんのアイドルというお立場のことで……要するに、アイドルは恋愛禁止、という暗黙のルールによるところが大きいのだと思いました」
すると、そこで栗山が口を挟む。
「NSJ44についていえば、それは暗黙ではなく、明確なグループ規約というべきだ。実際にそれを破り、一定以上のペナルティーを科せられたメンバーも――」
が、そう言ったところで、自らの言葉にバツの悪さを覚えたらしく、こう付け加えた。
「それについてはこの僕が、偉そうに指摘できたことじゃありませんよね……」
現在の立ち位置を顧みれば、確かに栗山が言えた義理ではなかろう。もちろん、その経緯は当人にしか知れないが、仮にも長峰ひかるにそのグループ規約を違反させているのが栗山であるという図式になるのだから。
そんな事情と栗山の言葉を踏まえ、サラは話を続けた。
「当然ですが私にとって、トップアイドルである長峰さんのお気持ちを察することなんて、おこがましい話です。恋愛禁止のルールに背くことについても、ファンの想いを裏切っているだとか、グループのメンバーに後ろめたいだとか、そんな風に想像してみても実際にその心の痛みまでは知ることはできません。それでも、僅か同じ女性としてなら、わかることもあります」
「それは?」
紺野に優しく促され、サラは緊張で声を上擦らせながらも懸命に話した。