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【Onlooker】~サラが見たもの~
第5章 アイドルの、掟(ルール)?
サラの話を聞いて、苛立ちを顕にしたのは栗山。
「さっきから、一体なにを言――」
「待って」
だが、それを止めたのは今まで栗山の背後に隠れていた恰好の、長峰ひかるだった。ひかるはサラの前に進むと、その顔を見つめこう話した。
「貴女が貴女なりに、私のことを慮ってくれてるのは、なんとなくだけどわかった。でも、それは全て甘えなの。私はファンのためにアイドルとして在る自分を選んで生きてきている。だから、それを曲げることは決して許されないことよ」
きっぱりとそう言った長峰ひかるは、まさにアイドルとしての風格を有しているから。そのオーラに当てられサラは怯みながら、それでも必死に言葉を絞り出した。
「けれど、一人の女性の幸せを奪うことを……一体、誰が望んだりしますか?」
「――!」
その時、長峰ひかるはハッと目を見張った。
それに対し、緊張のため大きく気持ちが昂ぶってしまったものか。サラはそう言うと同時に、その瞳から大粒の涙をほろほろと零し始めた。
「あれ……なんで、私が……?」
そう言い照れ笑いを浮かべながら、涙を拭うサラ。その華奢な肩を包み込むように抱いたのは紺野涼だった。
紺野は呆然とサラを見ている長峰ひかるに、こう声をかける。
「長峰くんは、どう思った?」
「どうって……」
ひかるは答えずにサラの涙を見つめながら、反対に紺野に訊いた。
「紺野さん――この娘の前で彼と抱き合ったのなら、私たちの出した結論は変わると思いますか?」
「たぶん……ね。いや、きっと変わると僕は信じよう」
「もし、それでも変わらなかったら?」
「その時は僕のこと――君たちと比べものにならないスキャンダラスな過去の出来事を、世間に公表することを約束するよ」
えっ……紺野さん、まさか、あの話を?
思わずギョッとするサラをよそに。
「わかりました」
ひかるはいち早く、その条件を了承していた。