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【Onlooker】~サラが見たもの~
第5章 アイドルの、掟(ルール)?
オンルッカーの現場でいつも戸惑うのは、自分がどの位置から愛し合う二人を見つめるのかということ。大抵はベッドの側に椅子なりを用意してもらうのだが。
その位置関係に慣れるまでには、ある程度の時間を要することになるのだ。
今もベッドを長手方向から俯瞰できる処に、サイコロのような背もたれのないソファが置かれ、サラはそれにちょこんと鎮座している。だが、問題はそれ自体ではなくて。
「あの……紺野さん……?」
「ん、なにか?」
「ち、近い……です」
「そ――?」
「で、ですからっ」
そんな短い会話の際にも、またそのダイレクトな吐息が耳にかかり、サラはゾクッとその身を捩った。
そう、問題なのは――紺野涼の存在である。
ベッドで抱き合う二人。それを眺めるサラ。そして、更にそのサラの横顔を直近から舐めるように見つめている紺野がいるという奇妙な図式。
紺野は背もたれのある椅子に座りながらも、組まれた脚の上で頬杖をつき前のめりになると、サラの耳元に唇が触れそうな距離感だ。
一応、紺野とベッドの間には、二脚のポールハンガーにシーツを被せた急増のつい立があり、あくまでもひかると栗山の情事を見ているのはオンルッカーのサラだけではあったが……。
「ごめんごめん」
紺野はふっと笑みを零し、自らの座る椅子を少し引くと、その背もたれに背中を預けた。
「サラさんがあんまりにも一生懸命でいじらしく感じて、つい意地悪をしてみたくなってしまったよ」
そんな風に言われてしまえば――
「そ、そんな……」
サラの顔面は、もう真っ赤である。
「でも、もう邪魔はしない。僕は見ていたいんだ」
「え?」
と、顔を向けた更に、紺野は言った。
「サラさんの眼差しが、彼らをどう裁くのか――その結果を、僕は確かめたいと思う」