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【Onlooker】~サラが見たもの~
第6章 共にする、一夜?
「潤が……妹がいるから」
病気の妹さんがいることは、初めて会った時に聞かされていた。当時は深刻な顔は見せはしなかったけれど、あまり病状が病状が優れないことも知っていた。自分と同じ歳なのに、学校にも通えない。その事実がある程度のことを物語っていた。
でも、どうして、それが障壁となるのだろうか。零子は納得ができなかった。一緒になって支えられると訴えたかった。妹さんの友達になって、励ますことだってできると信じた。
なのに――。
「ごめん……」
零子は全ての想いは、その一言の前で行き場を失った。紺野は見たことのない顔をしていた――。
時が過ぎて、再会が果たされたのは大学時代のこと。二年先輩だった紺野涼は同期生となり、同じ大学の入学式で偶然に。高校時代よりもやつした顔をしていたが、涼しげな笑顔は変わりがないように思えた。が、しかし――。
彼は既に――妹との哀しい別れを経験していたのだった。
打ちひしがれ、しかし立ち直ろうとする涼を、零子は今度こそ支えようと決めた。二人は付き合い、幸せな時間を共に紡ぐことを望んで。
だが涼が、妹のことを忘れることはなく。そして、ついには……。
「……」
久しぶりに過去を振り返り、今、紅谷零子は思う。自分が【Onlooker】を始めたのは、おそらくは今日この夜のためなのだ、と。
此処に至るまで、涼は自らを戒めようとし――。
零子はその心を、一途に癒そうとして――。
そうして、向かえたこの夜。あの眼差しを持つ白隅サラは、紺野涼と妹の物語にどんな結末をもたらそうとしているのか?
「サラちゃん……お願いね」
勝手だと思いつつも、零子はその願いをサラに託した。