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【Onlooker】~サラが見たもの~
第6章 共にする、一夜?

 それでも、初めから“あの結末”を望むだろうか。その後、涼は何度も自問している。否、望むはずがない。たとえ、潤の命が尽きることに変わりがなかったとしても。変えられないと、わかりきっていても……。

 涼は想いがそこに至る度に、強く唇を噛むのだ。

 自分から言っておきながら、果たして兄と妹の恋――そんなものが成立するものかと、先ずは当然の疑問に苛まれた。その時に、ではどうすればよかったのか?

 妹のことだから、もちろん情は強くて。幼い時から病床にあったという境遇がある故に、それは人一倍を遥かに超えて強い。しかし、その情ももってしても。妹の望みを叶えたい気持ちはあっても、やはりそれは難しいのだと思えた。

 明確な一線がある。社会的にも道徳的にも心情的にも、それは等しく設けられていた。

 だが、ひとつ。自分の死期をあるがままに受け入れ、非常な運命の成すがままにされようとする潤を、その病魔に蝕まれた身体を繋ぎ止めようと抱きしめた時に、涼は己が心の中に熱く滾る、なにかを感じずにはいられなかった。形さえないそれに、殉じようと思い至った。

 だから始まりは、逆に形だけでもいいのだと思えた。


 潤が入院と退院を繰り返すのは、その体調の兆しとの兼ね合いに過ぎずに。それだから、旧家である紺野家の屋敷に戻っていた妹のことを――


「潤……部屋を抜け出して、裏山まで散歩に行かないか?」


 あの日――涼はそんな言葉で、連れ出して行くのだった。

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