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【Onlooker】~サラが見たもの~
第6章 共にする、一夜?
それで、十分なのでは、と思った。異性とキスをするのは初めてではなかったけれど、この様な高揚感は初めての時ですら覚えたものではなく――それだから。
未だ少年という域の中に在った紺野涼は、そのキスを以って、この物語を終わらせようと考えた。その幕引きこそが、せめて潤のために――美しく、たったひとつ自分に用意できる贐(はなむけ)なのではないか、と。
しかし、それは飽く迄も、己が想いだった。優しい思いやりに見えて、実は至極勝手だ。おそらくは何十年の猶予が与えられることに、自分自身は些かの疑問ももってはいないくせに、と……。
そうして一体この先、幾度も恋愛を重ねることだろう。少なくとも、そうする可能性を有した、その兄の想いである。美しくあろうとすれば、それが偽りでないからこそ、哀しいほどに――軽く、感じた。
それに比して、その妹――紺野潤の想いは、重い。時に、それは残酷なまでに……。
たった一度きりと望み、その味を知ったからこそ、次に更に奥底までを――
「涼……もっと」
「じゅ、潤……?」
彼女は、その舌で求めた。
潤からの二度目のキスが、涼の瞳に映る薄暮の景色を、ぐちゃぐちゃに溶かしてゆくのを何気に感じた。同時に、互いの箍を緩めるようにして……。