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【Onlooker】~サラが見たもの~
第6章 共にする、一夜?
涼が潤の霊前に立つことを許されたのは、葬儀の一切が執り行われた後のことだ。既にその亡骸は火葬を経ていたようで。今は小さな骨壺の中に残されて在るというのが、涼には――どうしても、実感できなかった。
「……」
手を合わせることすら忘れ、呆然とそこに立ち尽くしていた。遺影を仰ごうとしたけど、そこはかとなく怖い気がして、なかなか見つめることができないでいた――すると。
暫くして背後に人の気配を感じた。涼はそれを振り返らずに――訊いた。
「潤は、手術を?」
一拍の間を置き、父の低い声が応じる。
「……それに耐えられる身体ではなかった。だが、万全は尽くしたつもりだ」
ぎゅっと拳を握って、肩を怒らせた。
もうひとつ気にかかる事象があったが、それは聞くまでもないように思われ――否、それを聞いた後に、自分が正気を保てずになにをするか怖くて、止めた。
だから、その代わりに――
「この僕が……潤の死期を早めたと、そう思いますか?」
こう、訊ねている。すると――
「そうは言ってなかったよ――潤は、な」
そう答えた父の足音がかつかつと、涼の背中から遠ざかった。
「……」
孤独を胸にようやく見つめた潤の遺影は、笑ってはいたけれど――。
美しくはあった、けれど……。
「潤……」
自分の身体さえ支えきれずに、涼は――崩れ堕ちるしかなかった。