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【Onlooker】~サラが見たもの~
第7章 その関係は、曖昧?
それを耳にして、俊太が戸を開くと。
「よお、生きてるな」
と、ニヤリと強面が笑った。
尋ねて来るのは、父親の“部下”を名乗る男で。とにかく柄が悪かったから、きっと“部下”なのではなく“手下”なのだと、子供の俊太でもそう思っていた。
そして――「ほらよ」男は上着のポケットから無造作に掴んだ“それら”を、玄関先にばら撒くと「じゃあな」と言って、アパートを後にするのだった。
チャリンと辺りに散らばる、硬貨と、ヒラヒラと宙を舞う、紙幣と。俊太がそれを拾い集めると、おおよそ四千円くらいになる。それが、一カ月の生活費。当然食費に限ったとしても、満たされるはずもなかった。
後で知ったことだが、父親は実際には数万円の金額を“部下”に渡していたらしいけども。が、仮にそれが十万円だって、その点については変わりはないことだろう。俊太とその父親、その間に挟まる言葉――それは、ネグレクト。
それは、ほったらかし、という虐待だ。