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【Onlooker】~サラが見たもの~
第7章 その関係は、曖昧?
※ ※
人との関係に、悩み戸惑う。見えない絆を信じて、だからこそ時に、思わぬ裏切りに心を砕かれてみたり――。
それでも強く結びつく人たちは、至る所に見えているから。けれど、それを羨んでみても、同じものは一つとしてないの――だろう。
過去に既に壊れ置き去りにしていたそれに、今も頻りと心を痛めている――それは、黒木俊太の場合。しかし、その傷の大小に捉われないとしたら、それもこの世の常ということなのか――。
そして同じく過去に横たわる影に苦しみ、ようやくそれを取り去ろうとするからこそ、逆に見えづらくしてしまう――そんな関係性もあるのだ。
たとえば、この二人の場合がそうであろう。
「……!」
【Onlooker】事務所、その奥の社長室。そのドアが、コンコン、とノックの響きを伝えた時に――
紅谷零子はドアが開くより先に、真っ赤な唇、その口元に笑みを作っている。その上で――
「あら、どうも」
「や、やあ……」
機先を制された恰好で、さしもの紺野涼もやや面食らっていた。