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【Onlooker】~サラが見たもの~
第7章 その関係は、曖昧?
そんな見慣れぬ態度に、今度は思わずくすっと笑い零子は訊く。
「随分とスッキリした顔に見えるけども。律儀にも、改めて詳細の報告ということかしら?」
「ハハ……かなわないなあ」
紺野は言いながら、悪びれずに笑んで。
「零子には、どうお礼を言っていいものか。それとも、いっそ土下座でもすべき、とか。その点では悩ましいよ」
「別に、どちらもいらない――けれど、そうね。我儘を言わせてもらえるのなら、ちょっとだけ慰めてほしいのかも」
「慰める?」
「ええ、だってそうでしょう? 結果的に私、女性としての魅力であのサラちゃんに負けてしまっているのだから」
「そ、それは――あの場合、女性の魅力がどうとか、そういう問題とは違って――」
「フフ、――ほんの冗談」
そう言って、再び笑みを向けている零子に――
「ホント、かなわないよ」
紺野は苦笑して、頭を掻いた。
零子は小さな息を吐き、それまでと違う声のトーンで囁くように、こう訊ねる。
「で――すべてを、吹っ切れそう?」
「うーん……いや、それは」
「ま、でしょうね」
「それでも、ずっと沈降を続けていた潜水艦(ふね)が水圧で圧壊する寸前で、浮上の兆しを得たんだ。劇的な変化だよ。後、この先のことは自分次第かな」
「そう――」
「だから、やっぱり――ありがとう。とりあえず、それだけは言っておきたかった」
紺野はそう言うと、踵を返し部屋を後にしようとしている――その背中に。
「この先の貴方に――あの子(サラちゃん)は、必要?」
零子は、問うた。