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【Onlooker】~サラが見たもの~
第7章 その関係は、曖昧?
その代わり、次に天井のキャンバスでは――
『ひとつ、約束できる?』
表れた零子が、再びそれを問うた。
「難しくて……わかんないよ」
二つを手にできないこと――それくらいは、わかってる。そして、零子との“約束”を果たすためには、どちらかを選ばなければならないのだと、それはたった今、なんとなくだけど理解していた。
だけど、その答えを出すのは今ではないから。もしかしたら、どちらも失ってしまうのかも。そんな不安な心を押し殺し、サラはそれを考えるのを止めた。
すると、キャンバスには――
アイドルの長峰ひかるや、小麦色の肌が眩しい咲花。乱暴されそうになった男たちや、ラブドールのヤマダ。そして、初めての時の不倫の女性――だったり。
この数週間、オンルッカーとして見つめた人々のイメージが、ぐるぐると描き出されていった。そして、またそれらが消えて、更に記憶を遡ろうとした時に――。
ぽふっ――と。
サラは自らの視界を、枕のクッションで覆い隠していた。そうしてから――
「さ――もう来週から、学校だよ」
夏の日が、終わる頃――。
サラは努めて元気な声で、自分に向かってそう言い聞かせている。