この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
【Onlooker】~サラが見たもの~
第8章 危険な、遊技?
「……」
零子はなにか思うように、じっとその様を見つめていた。
そうして、全てのグラスにワインが注がれた頃合いに、咲花が改まった口調で言う。
「先ほどお褒めいただきました通り、ワインはそれ相応のものをご用意させていただきました。この後輩からの精一杯のおもてなし――どうか先輩が、無下になさりませぬように祈ります」
「……」
明らかに雰囲気を変えた咲花と、何故か押し黙ったままの零子。視線を交わし緊張感を醸し出す二人の様子に、割って入ろうとしたのは――
「ちょっと――咲花さん!」
ソファーから立ち上がった、黒木である。一番無関心を決め込んでいた筈の彼の反応を、サラは「?」少し意外に感じていた。
「なに?」
「なにって……わかってるでしょ」
「だから、なんなの? いいから――俊ちゃんは、黙ってなさい」
零子と視線を合わせたまま、咲花はぴしゃりと言う。
そうして立ち尽くしたままの黒木の袖をつんつんと引き、サラが小声で訊いた。
「ね、どういうことなの?」
「どうっつーか……つまり、社長は――」
黒木がなんらかの説明を、サラにしようとした時に――。
「黒木くん、余計なことは言わないで頂戴。せっかくの場が、しらけてしまうでしょう」
「でもっ」
「いいから――」
黒木を制した零子は、グラスを片手にスッと起立し一同を見回す。そして――
「それでは、ご指名にあずかりまして――今宵どういった因果か集いました――この五名に」
そう発した零子は、くっ――と。そのまま一気にグラスを傾けていった。