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【Onlooker】~サラが見たもの~
第1章 見るだけの、お仕事?
「不倫って……いけないことだって思えば思うほどに、哀しいものなのかもしれないわ。きっと……彼女は彼を家族から奪えるほどに、強くはないのでしょうね」
零子が、言った。
そうなのかもしれない。サラは思う。そして、おそらく彼女は、彼との関係を秘め続けていることに疲れ果てたのだろう。だから、彼女は本心から『妻』という抗えない存在に、この情事を見せつけたいと――強く望んだ。
だけど、それが叶わないから……今は、私に?
「なんで、不倫なんて……」
ふと口をついたのは、とても根本的な疑問だ。
「誰にも祝福されないなんて……私なら、嫌です。そうなることくらい、初めからわかってるはずなのに……」
それを受け、零子は言う。
「まあ、熱病なのでしょう」
「熱病……?」
サラは零子に、その言葉の聞き返した。
「恋愛はね、制限を受けるほどに熱を帯びるものなの。他に代わるものがない。この男しかいない。そんな想いを唯一無二だと尊んでしまう。不倫故に人知れず想いを募らせれば、だからこそ何処までも――熱く熱く、その心を燃やすの。たとえ燃え尽きて、後になにも残らなかったとしても、ね……」
「……」
「別に肯定なんてするつもりはないわ。ただ、誰かを傷つけると自覚しているのなら、自分が傷つくことなんて当然よね。そういうの、哀しいじゃない、なんか……同じ女として」