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【Onlooker】~サラが見たもの~
第1章 見るだけの、お仕事?
二十歳という年齢にしては、何処かあどけなさを感じさせた。
そんなことを、自分でも自覚し始めていたから? 今年になって生まれて初めて、肩より長く髪を伸ばしている。
天井を見上げた顔の後ろから、そのサラリとした黒髪が床に触れそうなくらい真っ直ぐに垂れた。
まだ八月だから、学校は夏休みの最中。
だが、今のサラには残りの夏休みを楽しく過ごそうなどという心のゆとりは、それこそサラサラない。否、その口にした独り言から察するに、ゆとりがないのはどうやら懐具合のようであって――。
そう。彼女は金に困り、バイトを探している最中だった。
甚だ急なことではあったが、今月から親の仕送りには一切、頼れなくなってしまっている。生活費から学費に至るまで全てを自分でどうにかしなければ、学校で勉強することすら儘ならないのだ。
困ってる人の助けになりたいと考え、ソーシャルワーカーを目指し今の学校で学ぶことを選んでいた。そんな彼女にとって、学校を辞めるなんてことは絶対に避けたい。
そう強く思うからこそ、精神的にもかなり追い詰められようとしていた。
「馬鹿なんだから、勉強だって人並み以上にしなきゃいけないのにさぁ。限られた時間の中でバイトしたとしたって、そんなの焼け石に水だよ……」
呟きながらふと虚ろなその瞳を、つけっ放しにしていたテレビの液晶画面へ向ける。
放送されているのは、どうやらニュース番組のようだが――。
『この夏、観測史上でも例のない記録的な豪雨に見舞われた信越地方ですが。特に土砂崩落の被害にあったN県A村の山間部では、現在も復旧作業が続――』