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【Onlooker】~サラが見たもの~
第8章 危険な、遊技?

 ま、まさか……拳銃……?


 サラはそんな直感を働かせ、状況が更に重くなったことを実感している。


「フ――いくらなんでも、ジョークが過ぎるような気がしますが」


 咲花に伸ばしかけた手をゆっくりと引きつつ、紺野は軽く“お手上げ”のポーズを取った。その微笑は絶やさずとも、流石に額には冷や汗を滲ませた。

 対する口髭の男は――


「ええ、もちろんジョークです。が、これが本当にジョークなのか、それを確かめることはお勧めしません。貴方様のために――」


 そう言ってニッと笑い、ベールに覆われた“なにか”を、しっかりと構え直した。


「……」


 紺野には、もちろん無理をしてほしくなかった。でもサラは、自分でこの状況をどう打開していいのか、それもわからずにいる。

 咲花や、それに従う口髭の男が、とにかく怖くて。鈍く光る出刃包丁の刃――それが、これから起こそうとする場面を想像し、それがまた恐ろしくて堪らなかった。

 零子はこれを、サラのための“ステージ”だと言った。だけど、こんなステージなら、できることなら降りてしまいたいと思うのに。皮肉なことに間違いなくその中心には、今まさにサラが立っているのだ。

 それを自覚するからこそ、サラは心と身体を震わせ、挫けてしまいそうになった。


 ごめんなさい……。


 とにかく謝ろう。自分がなにをしたとかしてないとか、そんな理屈は通用しないだろうから。泣いて頭を下げて、もうそうして許しを乞うしかない――サラが、そう思いかけた時だった。


「え――?」


 咲花は驚いて、そんな声を洩らしている。

 それは決して素早い動きとは違った。だが彼はこの場の空気の一切を無視すると、スタスタと無遠慮に歩を進めて、咲花の手からその凶器を奪い取っている。

 だから誰の目にもノーマークで、誰もそれに反応することができなかった。


「俊ちゃん……?」

「俊くん――!」


 それぞれの呼称が重なり、それで呼ばれた黒木は深いため息を吐いた。

 そうして――


「もう、よしましょうよ」


 と、言う。

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