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【Onlooker】~サラが見たもの~
第8章 危険な、遊技?
「俺は、ただ――前の自分を見てるようで、それが嫌だっただけ」
「?」
浮かない顔で話した黒木を、サラは不思議そうに見つめた。
前に黒木は「俊ちゃん」と呼ばれることを嫌っていて、そう呼ぶ咲花は今日この場にいる。その理由が咲花との因縁によるものなのか、もっと別の話なのかはまだ検討がつかないけれど。もう少しで、なにかは見えてきそうな気がした。
そしてこの後に思わぬ形で、その一端は明らかになるのだが……。
「そ、わかったわ」
咲花は先ほどまでの怒りを鎮めると、再び勝ち気な表情で言う。
「しらけてしまったことだしぃ。とりあえず、この余興はこれで終わりにしてあげる。ほら――気が変わらない内に、さっさと引っ込みなさいよ!」
咲花に尻を蹴られた優男と坊主頭が、命からがらといった様相で部屋の奥へと逃げ込んで行った。
と、それとほぼ同時。紺野と顔を突き合わせていた口髭の男が、自分の手元を隠していた白い布をパッと取り払っている。その右手が握っていたものは、どうやらチョコレートの箱であるらしく――。
「ベルギー産ですが、よろしければ」
「ハハ……まいったな」
緊張を緩和して、紺野も思わず苦笑いを浮かべた。
そんな周囲の様子を見て、サラはホッと胸を撫で下ろす。が、間髪を入れずに、咲花はまた黒木の方を睨み付けて言った。
「わかってるのよねぇ――俊ちゃん?」
「!」
「せっかく準備した余興を台無しにしてぇ。この私に恥をかかせといてぇ。それで、只で済むとは思ってないでしょう?」
そう話を振られた黒木は神妙な顔をして、観念したように呟いた。
「まあ……でしょうね。はい、覚悟してますよ――咲花さん」
ニイ――。
と、微笑む咲花を見て――
「……」
サラの心は、またざわめき始めるのだ。