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【Onlooker】~サラが見たもの~
第9章 委ねられる、人生?
「フフ、そうよ。その顔――マジな娘を相手にする時は、貴女自身がマジにならなきゃダメでしょ」
そう言って立ち上がった零子に、肩をポンと叩かれた時。咲花の脳裏に、ふとある場面の自分の姿が蘇っていた。
それこそが――
『お願い……今夜は一緒に居てよ、俊ちゃん』
「……」
あの時の自分は、どうしてあんなのも寂しかったのだろう。誰かに縋りたかったのだろう。そして、あんなにも満たされなかったのだろう。
咲花はあの弱さを否定するから、それを消し去ろうとした。自分なりの強さを、手に入れようと努めた。
だが、もしかして、それは――
「どうして、今更……?」
サラに頬を打たれた感触。そして、今の零子の言葉。それらが、あの日の自分を想起させようとするのか、まだ咲花にはわからなかった。
力なく座り込んだその肩を、零子にもう一度叩かれ。
「……!」
そうして仰いだ時に、零子が歩を進め口髭の男と対峙していたのを見た。
「貴方が側いると、甘やかしすぎるのではなくって?」
「ハハ……側にいるのは、私の方ではありませんが」
そんな二人のやり取りを、咲花は呆然としたまま耳にしている。