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【Onlooker】~サラが見たもの~
第9章 委ねられる、人生?
黒木のあの背中なら、一目で見誤るはずがない。そう思った時に、サラの心にふっと不安が湧きあがっていた。
追いついたら私、なんて言ったらいいのかな……?
咲花とのこと、それと会いにいくという「チハルさん」という名前。そんなことを考え合わせた時に、自分が黒木にとってどんな存在であるのか、それが気にかかった。
私こそ、邪魔なんじゃないの……?
そんな後ろ向きの自問をして、サラはぱたりとその足を止めた。
「うう……なにを今更、悩んでるのよ」
自分を奮い立たせようと頭を振った。と、その弾みにサラはふと黒木のこんな言葉を思い出していた。
『唯一見られたくないヤツには、もう見られちまったし……』
あれは、自分のことだと思うからこそ、この心を痛めたはず。そう考えたサラは、とにかく追いつき、まずは黒木に謝らなければと、そう決めるのだった。
そして、再び走り出したサラは――その先で。
「あっ……!」
濃紺のスーツの背を丸め、ズボンのポケットに手を入れて歩く、その背中を見つける。