この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
【Onlooker】~サラが見たもの~
第9章 委ねられる、人生?
「あのっ……」
追いつき声を詰まらせたサラは、黒木のスーツの袖を掴み、その動きを止めた。
「ああっ?」
そうしてギンと睨まれた時に、サラは大いに怯んでいる。
「ゴ……ゴメンナサイ」
酷く片言となった謝罪は、さっき決めていた意とは異なり、とりあえず“謝っておけ”的なもの。不快そうに顔を向けた黒木に、端的に言えばビビっていたのだった。
が、しかし――
「なんだ――お前か」
サラだと気づいた黒木は、その表情を緩和させた。
その様子にまずはホッとしながらも、サラはおそるおそる訊ねる。
「あのさ……私のこと、怒ってない?」
「は? なんでだよ」
「だって……私のせいで、その……」
サラはあの動画を見てしまったことを、どこか後ろ暗く感じて口籠ってしまった。
すると、黒木はため息をつき――。
「私のせいとか、そんなの関係ねーよ。余興とか言って、あんなの咲花さんが一方的に押しつけてきた因縁だろ。流石にあの人だって、あのまま続ける気はなかったと思うしな」
「そうだとしても……私は俊くんに、謝りたくって……」
サラが顔を上げてそう言った時に、黒木は口元を引き締め厳しい顔を作った。
「言ったろ。関係ねーって」
「だ、だって……」
「黙れ!」
急に苛立った黒木に強く言われ、サラはビクリとして肩を竦ませた。
その驚いた様子に今度は黒木がバツの悪そうな顔をして、黒木はこう言うとサラに背を向けて歩き始めた。
「アレを見て、わかったろ。俺はあーゆー奴だ。お前が謝るとか、別にそんな必要はねーし。もう、こうやって関わってこなくても、いいから」
そう話した言葉が、とても投げやりなものだって、そう感じたから。サラは去ろうとするその背中に向けて、このように言うのだ。
「ねえ――言い訳してよ!」
「――?」
「言い訳して――そしたら私にも、言い訳をさせて」
「……」
雑踏の中、距離をおいて二人は再び、互い顔を見つめ合っていた。