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【Onlooker】~サラが見たもの~
第9章 委ねられる、人生?

「あのっ……」


 追いつき声を詰まらせたサラは、黒木のスーツの袖を掴み、その動きを止めた。


「ああっ?」


 そうしてギンと睨まれた時に、サラは大いに怯んでいる。


「ゴ……ゴメンナサイ」


 酷く片言となった謝罪は、さっき決めていた意とは異なり、とりあえず“謝っておけ”的なもの。不快そうに顔を向けた黒木に、端的に言えばビビっていたのだった。

 が、しかし――


「なんだ――お前か」


 サラだと気づいた黒木は、その表情を緩和させた。

 その様子にまずはホッとしながらも、サラはおそるおそる訊ねる。


「あのさ……私のこと、怒ってない?」

「は? なんでだよ」

「だって……私のせいで、その……」


 サラはあの動画を見てしまったことを、どこか後ろ暗く感じて口籠ってしまった。

 すると、黒木はため息をつき――。


「私のせいとか、そんなの関係ねーよ。余興とか言って、あんなの咲花さんが一方的に押しつけてきた因縁だろ。流石にあの人だって、あのまま続ける気はなかったと思うしな」

「そうだとしても……私は俊くんに、謝りたくって……」


 サラが顔を上げてそう言った時に、黒木は口元を引き締め厳しい顔を作った。


「言ったろ。関係ねーって」

「だ、だって……」

「黙れ!」


 急に苛立った黒木に強く言われ、サラはビクリとして肩を竦ませた。

 その驚いた様子に今度は黒木がバツの悪そうな顔をして、黒木はこう言うとサラに背を向けて歩き始めた。


「アレを見て、わかったろ。俺はあーゆー奴だ。お前が謝るとか、別にそんな必要はねーし。もう、こうやって関わってこなくても、いいから」


 そう話した言葉が、とても投げやりなものだって、そう感じたから。サラは去ろうとするその背中に向けて、このように言うのだ。


「ねえ――言い訳してよ!」

「――?」

「言い訳して――そしたら私にも、言い訳をさせて」

「……」


 雑踏の中、距離をおいて二人は再び、互い顔を見つめ合っていた。

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