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【Onlooker】~サラが見たもの~
第9章 委ねられる、人生?
バーの中の柔らかな照明に照らされたカクテル。その幻想的で綺麗な色合いのグラスを、サラはそっと口に運んだ。
「……ん」
一口、大人の味を噛み締めると、身体の内からほわっとした熱量を帯びる。それが頬にまで伝わった時に黒木を見たサラは、なんだか不思議な気分になった。
思えば第一印象は最悪。いつも不服そうな顔をしていて、まるで怒ってるような口調で。なのに、そのどこか拗ねたよ少年のような横顔が、今はとても……。
「なんだよ?」
「ううん……べ、別になんでもなくて――」
ややトロリとした視線のわけを誤魔化し、サラは咄嗟に思い当ったことを口に出した。
「あ、そういえば――誰かに会いに行く途中じゃなかったの?」
「――!」
その時、黒木の顔色が明らかに変わったのが、サラにもわかった。そう容易く触れてはいけない場所に、手を伸ばしてしまった。そう感じ、サラは慌てる。
「えっと……なんか、ごめん。だけど……」
口ごもりながらも謝り、とりあえずその反応を窺う、すると――
「そう、だった……」
黒木はそう呟き、スーツの内ポケットからスマホを取り出した。そして、それを操作しながら何気に口を開いている。
「さっきな……」
「う、うん……?」
「他の連中が例の動画を観ている時に、着信があったんだ」
「誰……から?」
サラは訊ねる。
『チハルさんです』――と、その名は既に耳にしてはいるが……。