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【Onlooker】~サラが見たもの~
第9章 委ねられる、人生?
「何年か前から、たまに着信があるその番号自体は身に覚えがなかった。それでも……それが誰からなのかは、すぐにピンときていた。少し前に初めて電話に出て相手を確かめた時、『俊ちゃん』と呼んだその声を耳にして……俺は、心の底からゾッしていたよ」
「そんなにも……嫌な、相手?」
「……」
サラの問いに黒木は応えずに、片手で淡々とスマホの操作をしている。そうしながら――
「それからは日に何度何度も――今日までに何百回という着信があった。俺はそれを無視し続けることしかできなかった」
その話――『何百回』という部分に異常性を覚えて、サラは言った。
「着信拒否とか、しないの?」
すると――
「それはできない」
「どうして?」
「俺が電話を無視してる内は、いいんだよ。『俺が出るまで電話をかける』という行為自体が、“目的”になるから。それがある内はたぶん、何度も繰り返すことに疑問すら感じないだろう。あるのは使命感だけだ。だが、着信拒否をしちまったら、それすら奪うことになる」
「……?」
黒木の話すことが、サラにはさっぱりわからなかった。
すると、黒木はスマホからサラに視線を移す。
「お前が、あの動画の中の無様な俺を観てる時、少し自暴自棄になった。それで、俺から初めてメッセージを送った――『今から会おうか』って」