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【Onlooker】~サラが見たもの~
第9章 委ねられる、人生?
「妙な前置きをして、悪かったな」
黒木は自嘲気味に笑い、そう言う。そして――
「身の上話なんかしたことないから、上手く話せないかもしれない。それでも、一応は聞いてやってくれ――とりあえず、俺のガキの自分の話だ」
サラは黙って頷き、それを了承した。
黒木はまず、孤独だった少年時代のことをゆっくりとした口調で語った。父親に半ば見放されて、古いアパートの部屋で一人で過ごしたこと。
満足な金すら与えられず、絶えず飢えていたこと。そのような状況の中で、学校の中にすら安住を覚えられなかったこと。そればかりか、酷く疎外されいじめを受けることになった――ことを、順に。
「……」
サラは声もかけずに、その話に耳を傾けていた。話の中の黒木少年に、深い同情を禁じ得なかった。
だが、そんなサラの想いとは裏腹。黒木はその悲惨な話の数々を、特別な感情を滲ませることなく淡々と話し続けるのだった。
すなわち、サラは知る。黒木にとって真に「嫌だ」と感じる部分は、まだこの後に訪れるのだろう、と。
そうして、案の定――
「親父の再婚相手――その女(ひと)が、チハルさん」
「――!」
その名を耳にし、話を聞くサラの緊張が俄かに高まってゆく。
が、しかし――
「チハルさんのお蔭で、俺の日常が変わったんだ」