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【Onlooker】~サラが見たもの~
第9章 委ねられる、人生?

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 母親という存在を知らずに育った俊太にとって、チハルさんとの同居生活は新鮮な驚きに満ちていた。結局は彼女のことを語感で耳にした「チハルさん」と呼んでいて、当然その関係を“母子”という形に置き換えるつもりなんてない。

 それでも大人の女性の“温もり”と家庭という“安住”を、彼女が俊太にもたらしたことは確かだった。

 食事を作ってくれて、着るものを買ってきてくれて、洗濯とか掃除とか、身の回りの世話だって焼いてくれた。まるで見返りのない“優しさ”を彼女は与え続けてくれた。

 自分をほったらかしにしていた父親のことは嫌いだったけれど、その父親の“お蔭”でチハルさんと暮らしていけるのだから、そう考えれば許すこともできる気がした。まだ短い俊太の人生において、それだけチハルさんの“登場”は鮮烈なできごとだった。

 が、しかし――


「ねえ……俊ちゃん」


 それはチハルさんと暮らすようになってから、一年近くの月日が経過していた頃。黒木俊太が、まだ十四歳になる何か月か前のことだった。


「なに、チハルさん」

「今日の夕飯、なにが食べたい?」


 そんなありふれた会話をきっかけとして、初めて俊太は“ある種の違和感”を覚えることとなるのだ。

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