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【Onlooker】~サラが見たもの~
第9章 委ねられる、人生?
よくわからないままの、二人の関係。そこはかとなく、募る想い。それとは裏腹の、畏怖の感情。彼女の宿した闇は、あまりにも深く思えて。なに一つとして、噛み砕けるものがなかった……。
大人であるからこそ、歪(いびつ)に歪(ゆが)み切った想い(なにか)は――もしかしたら、未だ少年である俊太を無下に傷つけてしまうことになるのかもしれない。
確かに、そんな不安は消せなかった――けれど、それでも。
「父さん(あの人)のことなんて、どうでもいいんだ!」
「え……?」
「あの人が、僕の誕生日だからって帰ってくるはずないよ。チハルさんだって知ってるでしょう? ここに来る前の僕がオンボロアパートに、一人で押し込められていたこと」
「俊……ちゃん?」
「でも僕は、なんとも思わない。今日だって、あの人がいなくたって――いや、居ない方が清々としてるんだ。僕はチハルさんと二人でいい。二人がいい――だから」
チハルさんも元気を出して――俊太はそう望み、それは精一杯の言葉だった。
すると――
「俊ちゃん……ありがとう」
チハルさんは、そう言って涙を流していた。その姿はとても儚くて、思わず抱きしめたくなった。
でも、それはイケないことだと、子供の俊太は思う――。
「私ね、これから……今よりも、もっと……俊ちゃんのために、生きていこうって」
なのに――チハルさんは。
「そう、思った――ううん、あなたが思わせてくれたのよ」
一心に俊太を捉えた、その瞳は闇のように――深くて。