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【Onlooker】~サラが見たもの~
第9章 委ねられる、人生?
「それは……」
「どうなの――大事なことだから、ちゃんと答えなさい」
真剣な顔に強いプレッシャーを覚え、俊太は急いでそれに応じようとした。
「す、好きだけど……でも――」
その好きという気持ちは上手く言えないけども“こういう”のとは違うから――そう、今のチハルさんは、やっぱり違うんだ、と思う。
なのに、チハルさんは――
「ふふ、嬉しい。私も俊ちゃんのことが大好きなの――だけどね」
ニッコリと笑った顔は、すぐに消し去っている。
「言葉だけじゃ、ダメなの。確かじゃないから、不安になるわ。だから、男と女は……ね、わかる?」
そう問われて、ゆっくりと首を横に振る――と。
「『チハルさん』はね……男の人に寄り添ってないと、上手に生きられないヒトなの」
「……」
それはなんとなく感じていたことではあったけれど、でもだからといって……。モヤモヤとした想いに包まれる俊太をよそに、チハルさんは言葉を続けた。
「今夜、俊ちゃんはひとつ歳を取って、大人に近づいた。そして、私――『チハルさん』が――そのお祝いとして、もう少しだけ大人に近づけてあげるの」
「なにを言ってるのか、わからないよ」
「それでいいのよ、俊ちゃん。でも、感じてるでしょう?」
「あっ!」
「ふふ、そう――それで。そういう気持ち、少しずつ――もっと、教えてあげるから」
なにを言われているのか、なにを話したのかさえ、よくわかってはいなかった。でも、たぶん――チハルさんは父親に代わるべき“寄り添う相手”を探していて、今は側に俊太しかいないから。
チハルさんの精神(こころ)は弱くて、誰かに支えられていなければ、不安でポッキリと折れそうになるのだろう。
だけど、俊太が子供のままでは支えとして心許ない――から?
「……」
やがて俊太は呆然と部屋の天井を見つめながら、今のこれが現実の出来事であるのかさえも見失ってしまうそうになった。
そして徐々に“見ない振り”をしていた“快感”は波のように押し寄せてきていて。それに呑まれてしまえば、身体は楽だけど、心は苦しいに違いないと――激しく葛藤してゆくのである。