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【Onlooker】~サラが見たもの~
第9章 委ねられる、人生?

 しかし、そんな想いとは裏腹。その後、本当に何事もなかったように、平穏な日々は続いた。

 チハルさんは情緒を乱すこともなく、すっかり明るさを取り戻している。最初は懐疑的だった俊太の気持ちをも、解き解すほどに。それまで以上に甲斐甲斐しく、俊太の身の回りの世話を焼いてくれていたのであった。

 そんな日が、一カ月も続いた頃。

 もしかすると“あの夜の出来事”は、夢だったのではないかと、ふと思った。もちろんあの実感が夢であるはずはないが、それでもこんな風に思うことはできた。

 俊太が自分への“戒め”として傷を穿ったように。同じくチハルさんも、あの時の自分の行いを悔いているのではないだろうか――と。

 もしそうならは――己のため、チハルさんのため――何事もなかったことにしよう。今の生活を守るために、俊太は自分の心の傷に蓋を被せようと決めた。

 なのに――


「俊ちゃん……まだ、起きてるわよね?」


 俊太のその気持ちは、またしても砕かれようとしていた――。

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