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【Onlooker】~サラが見たもの~
第1章 見るだけの、お仕事?
「じゃあ、黒木くん。私は用があるから、ここで。サラちゃんのこと、ちゃんと送ってあげるのよ」
「うーす」
「あ、それと――」
運転席の黒木に窓越しに何かを耳打ちし、零子は一人、夜の街の中に消えて行った。
後部座席には、ポツンとサラが一人。その車が黒木によって、発車させられてゆく。
「……」
黒木は無言のままで、その様子を窺うとサラは居心地が悪い気がしてる。そんな気分を紛らわせるため、先程の零子との会話を反芻した。
「ホントに、いいのね?」
零子はそう言って、サラの意志を確認した。
私、よかったのかな……。
サラは自分の判断が正しかったのか、それを考える。
零子と交わしたの約束のことも。オンルッカーとして働くことも。まだまるで、自分の想像が追いついていかなかった。
でも、それを不安に思っても、もう仕方ないこと。サラは既に働くことを決めて、零子との約束にも応じてしまっているのだ。
とにかく、やるしかないよ……。
サラは唇をぎゅと結び、顔を上げ車窓に流れる都会の夜の街並みを見た。
と、そんな時だ。車の運転をしながら、黒木がぶっきらぼうに訊ねてくる。
「お前、ここで働くつもりなのか?」
なによ、急に?
ビクリと肩を揺らしながら、サラは恨めしそうな顔で黒木の後頭部辺りを睨んだ。とにかく、この男の印象は、すこぶるよくない。
「そのつもりですけど、なにか……?」
サラはフイっと、顔を背け怒ったように答えた。
「へえ……」
お前に、できるのかよ――言葉が、そう続きそうだと感じた。バカにしたような、笑みを含んでいるように聞こえる。