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【Onlooker】~サラが見たもの~
第10章 導かれゆく、想い(こたえ)たち?
「いやっ……」
暗がりの中で、浮かび上がった霊魂に慄き。
「きゃあっ!」
通路の角を曲がれば、待ち構えていたゾンビの出現に背筋を凍らせた。
サラは、さっきの絶叫マシンとは違う種類の悲鳴を幾度も上げる。実を言えば、この手のアトラクションは苦手だ。ホラー映画でさえ、怖くて一人では観られない。
それならどうして自らホラー系を選んでいるかといったら、それはやはり憧れのデートプランの一環ということのようで、またしてもそれはベタベタなイメージではあるのだけど。
震えあがってしまった時に思わずしがみついていた腕、その顔を見上げれば――
「大丈夫かい?」
そう言って包み込むように微笑む、紺野がいてくれること。
「は、はい……」
これこそ正に、サラが思い描いていた理想のデート相手、ということになるのだろう。
肩をそっと抱かれエスコートされて、サラはその胸を熱くしていた。
だからその後も心ゆくまで、サラは精一杯初めてのデートを楽しもうとすることに余念がない。
はしゃぎすぎてつまづき、手にしたソフトクリームを落としそうになる場面。
――カシャ。
メリーゴーランドの馬の背から、笑顔で手を振っている場面。
――カシャ。
キャラクターの着ぐるみに、無邪気に抱きついた場面。
――カシャ。
そのような幾つかの場面が、舞台演出家の紺野涼の目により切り取られていたものか。サラを温かく見守るその顔は、とても満足気である。
一日を遊び、斜陽が傾き始めた時。サラは乞うようにして、紺野に言った。
「最後はアレに――一緒に乗っていただけますか?」
「もちろん、喜んで」
そうして二人で乗ったのは、大きな観覧車だった。