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【Onlooker】~サラが見たもの~
第10章 導かれゆく、想い(こたえ)たち?




    ※    ※


 観覧車は尚も緩やかに回ると、およそ四分の一を周回し半分の高さに達した。

 その時、紺野に訊かれる。


「ひとつ訊いてもいいかな」

「どうぞ」

「どうしてサラさんのような娘が、そんな約束をしようと思えたの?」

「それは……」


 その答えは、当時のサラにはなく、今のサラにはあるもの。だから、あの時どうしてそれを了承できたのか、上手く話す事はできない。それでも、わかっていること――それは。


「なんとなく、零子さんに見抜かれたのだと感じていました。逃げている――私のこと。そんな自分を、たぶん、恥ずかしく感じていたんですね」

「それで……今は?」

「私、逃げるのを止めます。だから――決めました」


 淀みなく、サラがそう告げていたから。


「そうか……」


 紺野は瞳を閉ざし、なにかを察したように口元に笑みを浮かべた。

 その様子をじっと、サラが見つめる。夕陽に照らされた瞳が、ゆるりと揺れた。


「私――」


 と昂ぶった感情で発しようとした言葉に先んじて、再びサラを見つめて紺野は言う。



「共に約束を果たすべき相手は、どうやら――黒木くんのようだ」



 サラはハッとした後、自らの中のあらゆる感情を静める。紺野に伝えたい気持ちは、確かに逸った。

 けれど、まずは先に――


「ええ……そうです」


 ゆっくりとした口調で、そう伝えた。

 そうして半円となりつつある夕陽の中で、黒木と話したあの晩のことを思い返してゆくのである――。

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