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【Onlooker】~サラが見たもの~
第10章 導かれゆく、想い(こたえ)たち?
※ ※
あの夜、黒木の過去を知った、あのバーで――。
サラは、なんとも表現しようもない緊張感を胸に、黒木と共にチハルさんの到着を待った。そうして、ついに再会の時は訪れる。
「俊ちゃん!」
成長した姿に驚いたようにして、その名を口にしたチハルさんは、席を立って出迎えていた黒木を一も二もなく抱きしめていた。
「チ、チハルさん……」
「フフ、すっかり大きくなって……だけど――」
チハルさんは言葉を切って、改めて黒木の顔をまじまじと見つめる。
「背が伸びたって髪を染めたって、間違いない。逢いたかったよ――俊ちゃん」
そうしてもう一度、黒木のことを強く抱きしめた。
「……」
その様子を黙って見ながらサラは、想像してたよりずっと若くて綺麗だな、と率直に思っていた。黒木から聞いた話より七年の時を隔て、おそらくは三十半ば。少なくとも、そのような年齢には見えようがない。
が、一方でその眼差しには、どこか只ならぬ気配を感じる。否、黒木の話によりバイアスがかかっていることは否定できない。しかし、それでも常に一点だけを見つめたような視線は、その内なる危うさを示しているようだった。