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【Onlooker】~サラが見たもの~
第10章 導かれゆく、想い(こたえ)たち?
「……」
「ね? そうなんでしょ? そう思ったから、私は……ねえ、俊ちゃん――そうだと言いなさいよ!」
チハルさんが語気を強めて、そう言い放った後。チハルさんの意に反すれば、只では済まないだろう。そんな、最高潮の緊迫感が醸し出されていた。
しかし――
「それは、無理なんだ」
黒木ははっきりと、そう言い切った。更に、続けて――。
「チハルさん、お願いだ。これからは俺からも親父からも解放されて、自由に生きてほしい」
「な……なっ……?」
黒木を呆然と見つめたまま、チハルさんは次の言葉を出せずにいた。
すると、その時――黒木はそっと、サラの肩に手を置く。
「俺には今――コイツがいるから」
え……?
サラがその言葉に驚いた時。
しかし、同時に燃え滾るような“別の意思”を間近に感じ、サラは背筋を凍らせた。
「なんですって――?」
狂気に満ちた眼差しが、この刹那、初めてサラに向けられている。その狂気が殺気を生もうとした、その寸前のことだ。
「でも、安心しなよ」
「?」
「自由に生きることは、確かに大変だ。でも、ガキだった俺にもできたんだから、チハルさんにも必ずできる。男に頼ったって、頼らなくたって――それも自由だよ」
「そんなこと……それができるならっ」
チハルさんの怒りが、サラから黒木へ矛先を変える。
その威圧を正面から受け止め――
「俺はチハルさんに今でも感謝してる。だから――自由に必死に生きて、それでも生きずらくなった――その時には」
「その時……には?」
「俺がこの手で、チハルさんを殺してあげるから」
「俊……ちゃん?」
「だから、それまで――安心して精一杯、生きなよ」
黒木は凛とした顔つきでチハルさんを見つめ、そう言っていたのだった。