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【Onlooker】~サラが見たもの~
第10章 導かれゆく、想い(こたえ)たち?
チハルさんは、最期に――
「必ず、約束だよ……俊ちゃん」
そう言い残して、二人のいる店を後にした。
その姿を見送り、暫く脱力した後に、サラは訊いた。
「あれで……よかったの?」
それに対し、黒木は――
「さあ、しらね」
「そ、そんな無責任な……」
「違う。口からでまかせを言ったって、あのチハルさんが納得するわけねーだろ」
「じゃあ……?」
「覚悟があって言ったことだ。だからって、それで『よかった』とはならねーよ」
「そっか……そうだよね」
サラは納得し、そしてこう呟く。
「逃げ出すのを、止める――か」
「なんだよ、それ?」
「マンションを出てく時、俊くんがそう言ったんだよ」
サラはそう言って――
「憶えてねーな」
照れる黒木の顔を、じっと見つめた。
確かに、黒木がチハルさんに言ったことは滅茶苦茶である。しかし、チハルさんとの奇妙な結びつきを鑑みれば、それを否定することはできなかった。
そして背負ってゆくと決意したその先を、サラは共に見つめてみたいと感じていたから。
私も――逃げるのを、止めよう――かな。
ようやく微かに、自分の心に向き合えそうな気がしていたのだ。
「ね、さっきの――本心?」
「なにが?」
「俺には今、コイツがいる――とか」
「ああ、アレな」
黒木はそう言って、少し宙を見つめるようにして。
「悪い……アレはお前のこと、勝手にダシに使った」
「はあ?」
「だから悪いって……あの場はなんとか気を逸らさねーと、ヤバかっただろ?」
「なに、その言い方! 信じられなーい!」
そんな風にじゃれ合う二人は、まだ素直に手を取り合えないでいる。だから零子との”約束”の件でも、まだまだひと悶着ありそうだけれど。
それでも、サラにとって――やはり大事な一夜となったのだろう。