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【Onlooker】~サラが見たもの~
第10章 導かれゆく、想い(こたえ)たち?
夕陽が落ちると、薄暮の頃に変わる。園内に色とりどりの照明が灯り始め、地上が徐々に近づきつつあった。
観覧車の一周の終わりは、デートの終わりとイコール。この日のデートは、そうに違いなかった。
サラがそれを少し寂しく感じた時に、紺野は言った。
「ひとつ、お願いがあるんだ」
「私に……お願い?」
「うん、実はね――」
「はい……」
「僕はサラさんとのキスを、憶えてないんだ」
あ……そっか。
あの時の紺野は意識が混濁していて、サラの姿を夢の中で妹の潤と重ね合せていた。
「だから、もう一度……ちゃんとキスをしても、いいかい?」
そう訊かれて、サラは戸惑い。しかし直後、紺野を見据えて――
「はい……」
と、答えている。サラはとにかく、紺野の気持ちに応えたい一心だった。
そして、紺野が立ち上がり近づこうとした時に、サラは座ったまま――そっと瞳を瞑る。
そうして、紺野が身を屈めて、二人の顔が接近する――その情景のシルエットは。
「……!」
しかし数秒の時をおいて、サラはその唇の感触を自分の“おでこ”に感じた。
目を開けると、紺野はとても優しい目をしている。
「薄暮の頃は、不思議と潤のことを思い出すんだ」
「妹さんの……?」
「ああ、そして思うんだ。妹にも、ホントはこんなキスをしてあげたかったって……」
「紺野さん……」
紺野はその時、やはり自分に妹の姿を重ねていたのだと、サラはわかった。
「ありがとう」
その感謝の言葉をもって、サラの初デートは終わっていた。