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【Onlooker】~サラが見たもの~
第10章 導かれゆく、想い(こたえ)たち?
※ ※
紺野とのデートから数日後。
「はあ……」
学校帰りにカフェに立ち寄り、一人。窓際の席から通りの人の往来を何気に眺めて、サラは深いため息をついた。
視線を右手のスマホに戻すと、ため息の要因となったメッセージのやり取りを見直す。
【(サラ) とにかくもう一度、ゆっくり話をさせて】
【(黒木) 例の件なら話すだけ無駄】
【(黒木) お前も、無茶な約束を真に受けてんじゃねーよ】
【(サラ) だって…そのお蔭で私は学校を続けられたんだし】
【(サラ) 零子さんにだって感謝してるんだよ】
【(黒木) 俺も言ってやるから、金なら後で返せばいい】
【(黒木) 社長だって、たぶん冗談半分だろ?】
【(サラ) それが、違うの!】
【(サラ) 零子さんは私のためを思って…だから】
【(黒木) 人前でセックスすることに、どんな意味が?】
【(黒木) オンルッカーの客たちと同じような動機が】
【(黒木) お前にあるとは思えねー】
【(サラ) だから話を聞いてほしいの】
【(サラ) それでもダメなら、もう言わないから】
【(黒木) 俺のコンプレックスは知ってるだろ】
【(黒木) 一応は行く】
「やっぱ、いきなりだったのかなぁ……」
サラはそう言って、咥えたストローでアイスカフェラテを啜る。
黒木からのメッセージが一様に渋い反応なのは、サラと零子との間に交わされた約束の内容を鑑みれば、仕方のないことだろうとサラ自身が思う。
黒木のチハルさんに対する覚悟に触れた時に、サラは確かに触発されるものがあって。だからこそ、約束を果たす相手として黒木を、と決したわけだが。当然ながら、それだけの理由で頼める道理があるはずもない。
つまり、もちろん――サラがそれを黒木に打ち明ける前には、それなりの流れがあったわけで。それは流れというよりも、男女間に漂うムードというべきものだろう。
あの夜、バーを出た二人には、確かにそんな場面があった。
「冗談じゃなくて……私のことどう思ってるのか、ちゃんと聞かせてほしいな」
深夜の街中で、黒木の腕を掴みその歩みを止め、サラはそう言っていたのだった。