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【Onlooker】~サラが見たもの~
第10章 導かれゆく、想い(こたえ)たち?
「え、ちょっと――」
そのまま街路樹の影に引き込まれたサラは、唖然としたまま身体を反らせている。上からなにかが降ってきたような感覚に、驚いたのだ。次の瞬間――
「――!?」
突如として塞がれた呼吸は、上から降り注ぐような不器用で強引なキスを受けたことを教えた。その唇の感触をサラは只々“熱い”とだけ感じた。
それをすぐに終えて、黒木は視線を逸らし周囲からの目を気にするようにしながら髪を掻いた。よく見る、照れ隠しの所作だ。
「上手く言えねーし、上手くもできねーけど。それが俺だから」
「しゅ、俊くん……」
「けど、お前のことは、ちゃんと考える。これからゆっくりと――とりあえず、今はそれくらいでいいだろ?」
黒木は終始目を逸らしていたけれど、それは彼らしさだと思った。彼なりの誠実な言葉であるように感じた。
「……」
それを目にしたサラは、それまで鬱屈としていたものが――パアァ――と晴れ渡った気がした。
それは異なった性との、もどかしくもスリリングな接触。唇が、そして心が。その触れ合った部分に確かなものを感じた時、サラにはもう迷いはなかった。
だが、そこからアプローチに至る部分で、二人には明確な温度差がある。黒木には過去より齎されたコンプレックスのため「ゆっくり」と言い、サラには零子との約束を果たそうとする程に、そこに「焦り」が生じた。
それ故に――。