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【Onlooker】~サラが見たもの~
第10章 導かれゆく、想い(こたえ)たち?
暫く待って、サラの元に到着した黒木は――
「この後、他のオンルッカーの送迎があるから、あまり時間は取れねー」
と、目を合わせずに、そう話した。
「そっか……忙しいのに、ごめんね」
サラが沈んでそう言ったのを見ると、黒木は少し苛立ったように顔を歪めた。しかしそれは、サラに対してというのとは違って、そんな顔をさせた自分に対するものだったのかもしれない。
「送ってやるから……話なら、車の中で」
「うん……」
カフェを出て、黒木の運転するベンツに乗る。車が走り出すと――
「……」
サラはいつもの助手席から、前を向く黒木の横顔を眺めていた。
すると、暫くして――
「俺も、協力する」
「え?」
「社長に借りた金なら、働いて一緒に返してやるから」
「俊くん……」
「あんな無茶な約束――守る必要なんてねーって。元々、単なる口約束なんだろ。社長だって、話せば聞いてくれる人だ」
「……」
「それじゃ、駄目なのか?」
渋滞で車が進まなくなった時、そう言って黒木は顔を向けた。
それを見つめ返して、サラは――
「ありがとう」
彼の気持ちは素直に嬉しかったから、まずはその気持ちを伝える。その上で――
「お金の問題じゃ、ないんだ」
真剣な眼差しで、そう言った。
大して黒木の方は、まるで理解ができないといった様子。
「だから――」
そう言いかけて、しかし車列が進んだことに気づくと、息をひとつ吐いて、車を走らせている。