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【Onlooker】~サラが見たもの~
第10章 導かれゆく、想い(こたえ)たち?
「お前だって……その……初めてなんだろ。つまり……よりによって、そんな瞬間を人の見ている前で迎えても……お前は、いいのか?」
それまでのように自分が「嫌だから」というのではなくて、今の黒木の言葉はサラへの思いやりに満ちていた。
「……」
そう感じたからこそ、ずっと直視してこなかった自分の心を、サラは少しだけ覗いた。
すると――
「私も……よく、わからないの……だけどね」
「お前……どうした?」
黒木が見た助手席には、涙を流し始めたサラの姿があった。ぼんやりと宙に向けた眼差しは、おそらくなにも捉えてはいなくて。
「わ、私……は……」
そうこの時、サラは自分の心の闇を見ていた――。
そして、次から次へとその瞳が産み出した大粒の涙が、頬を伝い顎の先からポタポタと落ちてゆく。
それが、絶え間なくて、止めどなくて――。
「オイ! 大丈夫か!」
その尋常でない様子を前に車を停車させた黒木は、サラの肩に手を置き、その意識に問いかけた。
すると――
「しゅん……くん?」
「ああ、一体どうしたんだ」
「私ね……それまで目を背けていたから、一人で向き合うのは……やっぱり、怖いよ」
「怖い?」
「うん、そうだよ……だから近くにいて……私のこと、支えて」
サラは懇願するようにそう言って、また涙でその顔をくしゃくしゃにしていた。