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【Onlooker】~サラが見たもの~
第10章 導かれゆく、想い(こたえ)たち?


    ※    ※


 人が一人で生きられない以上、互いに影響し合う定めからは逃れられないものだから。

 サラの運命が“あの夜”を境に動き始めたように、それと弾け合った“彼女”にも変化の兆候は表れていた。その彼女とは、その夜を演出しサラの精神にプレッシャーを与えた、咲花と名乗る“夜の蝶”のことである。

 咲花は、勝手気ままに周囲の人間を振り回し時に利用し食い物にしながらも、どこか満たされない想いに苛まれていた。

 新宿で一番の女を自称するほどに自信に満ち溢れていても、女としての美を刃を研ぎ澄ますように磨き上げてみても、そこはかとなく虚しかった。

 咲花はそんな想いを「退屈」という言葉で、吐き捨てていた。

 そうして、自ら催したあの夜の“宴”の席、それが開けた後のこと。先に黒木とサラが出て行き、やがて酩酊した零子も紺野に連れらて帰って行った、その後である。

 客が去りマンションの一室に一人残された咲花は、乱れた着衣のままボンヤリと床にへたり込んでいた。そうした時に――


『マジな娘を相手にする時は、貴女自身がマジにならなきゃダメでしょ』


 零子に言われたそんな言葉が、妙に心に残った。それまでの彼女には、なかった感覚だ。

 そして――


『私――貴女のこと、嫌いです』


「……」

 咲花は、サラに打たれた頬にそっと掌で触れる。あの瞬間には怒りが込み上げていたけれど、今は不思議と生暖かく感じられた。少しだけ、サラのことを妬ましく思った。


 あ、そうなんだ。私はあのお嬢ちゃんに、嫉妬していたんだ……。


 と、咲花は不意に気づく。

 しかし、その想いは間に紺野涼や黒木俊太を挟んだ上のことではなくて。ただ単に、あの白隅サラの感情が、真っ直ぐだと知って――それはもう。


「アハハハ――」


 思わず、笑ってしまうくらいに。

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