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【Onlooker】~サラが見たもの~
第10章 導かれゆく、想い(こたえ)たち?
しかしそんな愚直とも言えるほどのものが、とっくに捨て去った価値観が――どうして、今になってそんなにも妬ましいのか。
「あは……はあ……なんだろ? モヤモヤする」
その理由がわからずに、咲花は焦れた。
と、そこへ――
「どうか、なさいましたか?」
咲花の傍らに立ちそう言ったのは、口髭の男。咲花に言われるままに“宴”を取り仕切った執事風(サラの印象で)の紳士だった。
咲花はその顔を見ずに漠然と前を見たまま、ポツリと言う。
「なぁんかさ……嫌になったみたい」
「嫌になったとは、なにを指すのでしょうかな?」
「全部……今の私を取り巻くもの、その全て」
「ほお……」
その時、口髭の男の纏った空気が変わった。
その緊迫感を身近に肌で感じながら、それでも咲花は言葉を連ねた。
「ナシにしようと思う。私を退屈にさせてる――その全部を、ナシに」
その時、部屋の片隅に顔を出したのは、優男と坊主頭。この日の“宴”においては、サラを責めるための“道具”として扱われたヤクザの下っ端である。
その二人の男たちは所在なさげに、咲花と口髭の男のやり取りを只々見ていた。
すると、その時――。
「ああっ――!」
二人がそう声を揃え、驚くのだった。その理由は――?