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【Onlooker】~サラが見たもの~
第10章 導かれゆく、想い(こたえ)たち?
※ ※
様々に頻りと心を揺るがせ、そうしてなにかを決しようと試みて足掻いた。そんな日々を送って、とりあえず白隅サラは――その日を迎えていた。
季節は九月の下旬。連日の厳しかった残暑も次第に和らぎ、都会の街も夕に涼しさを漂わせ始めていた。
「あ――雨」
サラは車のフロントガラスに流れ堕ちた雨粒を見て、そう声を洩らした。
季節が移り変わろうとしていること。毎年繰り返される当たり前の変化に、こんなにも寂しくなったことがあっただろうか。
今日の雨がサラの心を、感傷的にさせてる。
「……」
ぽつぽつと降り続くそれを、尚も見つめるサラ。
その横顔をチラリと眺めて、ベンツを運転する黒木は静かに告げる。
「着いたぞ」
「あ、うん……」
ベンツが地下駐車場に滑り込むと、フロントガラスの雨粒もワイパーに弾かれていった。
二人が訪れたのは、いつかも仕事で訪れたことのある高級ホテルである。だが今日は、オンルッカーとしてこの場に来たわけではない。
そう、寧ろ――この夜の主役は、サラであり黒木であるのだから。
車を降りた二人はフロントには向かわず、コンコースを進むとエレベータに搭乗する。そして、最上階に程近い、スイートルームを目指そうとする。