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【Onlooker】~サラが見たもの~
第11章 オンルッカー……?

 黒木俊太とは、さっきの会話の初々しさを持ち出すまでもなく、まだ身体を重ねてはいない。事故的なキスを一度きり、今はそれだけの関係。サラは、この日に至るまで処女だ。

 初めての瞬間を、このように迎えること。そこに意味はあるのかもしれないし、ないのかもしれない。それでもオンルッカーであるからこそ、サラはその宿命から逃れてはいけないのだと感じた。

 そう――もう、逃げてはいられない。

 サラは衣服を拭去り、熱いシャワーでその身を清めた。


 そうして、およそ三十分後――。

 淡い照明に浮かぶ、ゆったりとした大きなベッド。その上に、白いバスローブ姿で所在無く鎮座するサラと黒木は――


「……」

「……」


 互いに視線を合わせずに、顔を俯かせていた。

 そして、ベッドの傍らから三歩離れて――


「ここから、見ているわ」


 そこに立ち尽くし、零子は言う。

 そうしてから、まだ呆然とするサラと黒木を交互に見つめ。


「私、二人のことが大好きよ」

「――!」

「だから、あなたたちらしく、焦らずに」


 とても優しい顔で、そう告げたのだ。

 零子のすぐ背後には、ソファーからじっと二人を眺める紺野の姿もある。

 その二人の視線が、注がれゆくベッドで――。


「俊くん……」

「……!」


 まずサラが、黒木の左手に自分の右手を重ねた。

 そうして――始まる。

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