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【Onlooker】~サラが見たもの~
第11章 オンルッカー……?
それでも“障壁”は、残され常に付き纏っていた。それを「早漏」だなどと自虐的に口にできた内は、まだ幸いであったのかもしれない。女嫌いを装えば、恋愛沙汰に対して我関せずの姿勢を崩さずにいられた。そうしていれば、その内心は穏やかでいられたから。
しかし、今――
「俊くん……」
自分の名を口にする白隅サラは、今まさに、女としての階段を上がろうとして、その気質までを変えようとしている。その瞳が、自分を求めようとして見つめた。
そして重ねた手の、その指先を俄かに動かした。
「――ッ!」
たおやかな指先の動きに、自分と別の意思の蠢きを感ずる。サラの指が黒木の指の動きを誘うようにして、五指のそれぞれが絡み合ってゆく。
この後に――どうする?
どうやって――応える?
俺に――できるのか?
黒木の葛藤は、決して容易くはない。それどころか、難解に尽きた。
白隅サラのことは愛おしくて、その想いに応えたい。しかし性的な高まりは、黒木俊太にとって背徳であり罪悪であるから。
少年時代にはそれを一刻も“早く”終わらせようと努めるより他はなかった。彼の不憫な生い立ちと周囲の歪な大人たちからもたらされた、いわばそれは“負のギフト”。それはそのまま、彼のトラウマとなった。