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【Onlooker】~サラが見たもの~
第11章 オンルッカー……?
白隅サラは、いたって普通の女の子だ。それどころかサラの心は同じ年頃の女の子と比しても、あまりにも無垢であり、それ故に脆弱である。
故に――
…………。
サラはその瞬間から、自分の視界が急激に狭まるような感覚に苛まれた。それまでくっきりと鮮明だった目の前に広がる世界は、どこか霞がかかったように途端に見えずらくなってしまったのだ。
信じられない――信じたくない現実を、受け止めるための準備など、誰だってすることは叶わない――そうだと、しても。
その後――田舎へと急ぐ新幹線の中で。
『サラ……お前のお父さんとお母さんはなぁ、ワシとばあさんを先に避難所に行かせた後で、一人暮らしの年寄りの家を見て回ると、山間の集落の方に向かって行ったんだ。その間も雨は絶え間なく降り続いておったが、その時点ではまだそう深刻な事態になるとは誰も考えてはいなかった。そんな風に甘く考えてしまい、ワシも強く止めることができなくてなぁ……』
「それで――お父さんたちは?」
『そのすぐ後のこと……土砂が大きく崩れ、山間の集落は呑み込まれてしまった……』
「えっ……?」
サラは飛び乗った新幹線の座席で、祖父との電話でのやり取りを、頭の中で幾度となく繰り返すこととなった。